帯の話

この記事、本当に読み応えがあって、何回も何回も読み返してる。
元々この町田康の「告白」という作品は、僕にとっても21世紀の読書体験の中でベストなそれだと思う、それくらい思い入れのあるもので、読み終えた後に「とにかくこの気持ちを誰かに伝えたい!」と思いながらmixiレビューを書いたのを憶えている。そして特にこの人にはそれが届いて欲しいと思った何人かの内の1人がtakayukkieさんで、その人がここまで素晴らしいレビューを書き上げたのを目にして、僕は正直、嫉妬した(笑)。

んで、そんなのどうでも良いと思う人も多いとは思うのだけれど、自分がこの作品を読み終えて真っ先に思ったことのひとつに、「この作品の帯、酷くね?」ということがあった。

「人はなぜ人を殺すのか」と言う一文を帯に載せた編集者のセンスを、本気で疑う。そしてこの一文を本作のメインテーマとして捉えているレビューは全て、読むに値しない。

2009年4月6日付mixiレビューより再掲。

CD国内盤を中古屋で購入することも多いし、ハードカバー書籍もまた然り。その時は極力、帯付きが欲しい。論理的に明確な理由があるわけじゃないけど、その作品の全てをひっくるめて楽しみたいから。帯に書いてある紹介文も含めて1つのフィジカルな商品としてパッケージングされているんだったら、こっちも出来るだけその状態で所持したい。

でも、作ってる方はそんなに思いを込めていないのかも知れない、そう思えてしまうような帯の付いた商品に出会ってしまうと、なんだか寂しい気持ちになりますよね。帯の文章を考えているのは出版社やレコード会社の営業担当なんだろうけど、クリエーターがそこに込めた思いとかけ離れたような煽り文句を載せることによる損失について、彼らはもう少し想いを馳せても良いんじゃないかな。そう思えてしまうような作品に出会ってしまう機会が、最近とみに多いような気がふとして。

まあ、電子書籍や音楽ダウンロードが今以上にシェアを獲得することによって、今書いているこんな文章そのものが意味を成さなくなる日が来るのも、もしかしたら僕が思っている以上に近い未来の話かもしれません。そもそも現状でも「帯なんか家に帰ってすぐ捨てるよ」って人も多いみたいですし。

でも、店頭で初めて出会う作品の帯に、思わず手に取ってしまうような素敵な言葉が書かれていれば、その作品に触れてみたくなるじゃない。そんな言葉を書かせた作品って、一体どんなだろう? そう思うじゃない。
そんな消費者体験を経てきた人間の、これは決して愚痴じゃなく、これからもそんな体験ができれば良いなという思いが書かせた、文字通りの単なる雑記です。

最後に、今も忘れない、大好きな帯文句を。

煌めきが聴こえる

僕はこの1文で、ASHに出会った。