music of the first half : 2012

No.1

曽我部恵一BAND

曽我部恵一BAND

どう考えても、1位はこれしかありえない。高校生の頃から曽我部さんを聴き続けてこれたことが、本当に嬉しく思えた1枚。2012年に曽我部さんを聴けたことが、本当に嬉しく思えた1枚。これからも曽我部さんを聴き続けていけるという確信を抱けたことが、本当に嬉しく思えた1枚。出会うべきタイミングで出会うべき1枚に出会えたことに、最大級の愛と感謝を。

 

No.2

レッキング・ボール(初回生産限定盤)

レッキング・ボール(初回生産限定盤)

ソカバンに負けず劣らずの大傑作。僕がソカバンに対して抱いた思いを、この作品に対して抱いている、そんなアメリカのどこかに住むかつての若者の姿が、僕には明確に想像できる。既に10年くらい前のライヴ盤に収録されていた「Land Of Hope And Dreams」が、このタイミングでオリジナルアルバム初収録になった意味に。そしてこの曲とソカバン「満員電車は走る」との共振に。僕はただただ、ただただ感動してしまった。

 

No.3

これからのこと

これからのこと

1970年代に荒井由実が奏でた音楽。1990年代に小沢健二が奏でた音楽。若者が無意識に醸し出す多幸感と、その裏から隠しきれずに顔を出すメランコリーを奏でる音楽。そして2010年代にその系譜を継いでいく可能性を、十分すぎるほどに提示する1枚。「ピクニック」から特に感じるその遺伝子の行方を、見失わぬように追っていきたい。

 

No.4

リトル・ブロークン・ハーツ

リトル・ブロークン・ハーツ

ナチュラルな時間が、流れない。ノラ・ジョーンズを聴いていて、こんなにもヒリヒリする時間が流れるなんて。中でもシングル曲「Happy Pills」(ところでこの曲の邦副題「幸せの特効薬」って、どういう趣向のジョークなんだい?)を挟む2曲が、特に強烈。かつて彼女が欲しいままにした「スモーキー・ボイス」の現在の代名詞、アデルにも負けない圧倒的な声の説得力。デビューから10年の新境地にして、これからの彼女の10年の代名詞になりうる、そんな1枚。

 

No.5

アメリカーナ

アメリカーナ

そして声の説得力で言えば、この爺さんも負けてない。ダニエル・ラノワの音処理とニールの直情が生んだ前作「ル・ノイズ」もなかなかの1枚だったけれど、アメリカのフォークソングの名曲を、ただクレイジー・ホースが演奏し、ただニールが歌う、ただそれだけの今作は、だからこそクレイジー・ホースの演奏とニールの声の持つ説得力が浮き彫りになっている。とりあえず最寄りのタワレコに行って、ヘッドホンをつけて1曲目の「Oh Susannah」を聴いてみてごらんよ。僕がそうであったように、ぶっ飛ばされるから。僕がそうであったように、気が付けばこの1枚を持ってレジに並んでるから。

 

No.6

光

とりあえず僕のツイッターTLでは賛否両論、いや、ここは正直に行こう、どう贔屓目に見ても「賛」より「否」が多い今作なんだけど、それがどうしたってんだい、僕のこの作品への評価は発売から2か月が過ぎても何も変わりませんよ。言ってみれば、「強い気持ち・強い愛」。小山田君が心をギュッとつなごうとした相手に、この気持ちは愛は、きっと届いてるさ!

 

No.7

it’s you

it’s you

そして、aoki laskaの1stフルアルバムも、伝えるべき、届けるべき相手を見つけ出している1枚。前作ミニアルバムのタイトルが「about me」で、今作のタイトルが「it's you」。もう、これがすべてでしょう。広く聴かれたいという健全な野心が、僕は大好きです。そして、広く聴かれるにふさわしい声を、彼女は持っています。「みてみて」と彼女が歌うのなら、ええ、僕は彼女を「みて」いきましょう。

 

No.8

オセアニア

オセアニア

個人的には上半期最大の驚きとさえ言える、予想だにしなかった大復活作。ずっと子どものままでいたいと願っていたスキンヘッドのオッサンは、ついに自分がオッサンであることを受け入れたのかも知れない。成熟とは喪失であることを嘆いてばかりいたオッサンは、ついに成熟とは喪失であることを受け入れたのかも知れない。中盤以降加速していく、ビリー・コーガンの泣きのメロディ。涙が枯れても人生は続く。涙が枯れてもスマパンを続ける。スマパンが人生だってことをようやく受け入れたオッサンビリーの生きざまに、枯れたはずの涙が、また溢れる。

 

No.9

ボーン・トゥ・ダイ

ボーン・トゥ・ダイ

「Born To Die」を「死ぬために生まれた」と訳す。中学1年生レベルの英文法に、このあまりに潔癖な1枚を聴いた僕は、どうしても納得がいかない。彼女の目に映るあまりに醜悪な世界を拒むために作られたのがこのあまりに美しいサウンドプロダクションなのだとすれば、そのあまりに美しいサウンドプロダクションで「死ぬまで生きて」欲しいと思うのだ。そう、僕にはどうしてもこの作品がネガには聴こえない。たとえそれが茨の道であっても、自分のやり方で「死ぬまで生きる」と訳したくなる、そんな強さを持った「Born To Die」なんだ。

 

No.10

ファーストへたれアルバム「忘れらんねえよ」

ファーストへたれアルバム「忘れらんねえよ」

思うような大人にはなれなさそうな気がして、思うような大人というものを特別意識しないように生きていくことにしたら、大人になるのは意外と悪いことじゃなかった。あの時思い描いていた未来図がどんなだったかなんて今では思い出せないけれど、今の僕を描いたって、そんなに悪くない絵になると思って生きている。そうやって三十路になってきた僕がどこかで捨ててきたものを後生大切に抱えて歩んでいきそうな彼らを、なぜかなのかやっぱりなのか、少なくとももうしばらくは、僕は視界から外せそうにない。