It's the end of R.E.M. as we know it, and what do you feel?

31年の活動を終える時の気持ちなど、僕に想像が及ぶはずもない。なんてったって、31年だ。僕の年齢と一緒じゃないか。僕が生まれた年に始めた活動を終える時の気持ちなど、僕に想像が及ぶはずもないじゃないか。

ブリット・ポップが洋楽の入口になった僕が彼らの音楽に惹かれた明確な理由は、今もって明確にはわからない。ブリット・ポップを中心に少ない小遣いの殆んどを費やして洋楽CDを買い漁っていた僕が彼らの「New Adventures In Hi-Fi」というアルバムを買ったきっかけが、ロッキング・オン誌の「R.E.M.、新しい時代精神への冒険」みたいな文句だったということは憶えている。国内盤にもかかわらず歌詞の掲載がないCDに出会ったのは初めてで、なんか騙されたような気持ちになったのも憶えているけれど、歌詞が何を言っているのか分からなくても、マイケル・スタイプと言う人の歌声には、そんなこと関係なく僕の心を持っていくに十分な力があった。中でもアルバムのラスト曲「Electrolite」という曲は本当に素晴らし過ぎて、初めて聴いてから15年が経とうとしている今も、初めて聴いた時の心の震えを思い出せるし、初めて聴いてから15年が経とうとしている今も、今まで生きてきて出会った曲の中で5本の指に入るくらいに特別な曲であり続けている。

96年、結果的に31年になった彼らの活動の中ではちょうど折り返しくらいの時期に彼らを初めて知った僕は、だから次のアルバム「UP」リリース前に発表されたビル・ベリーの脱退が、彼らにとってどれほどの大きなことだったかなんて、当時は知る由もなかった。ただ彼らがまた音楽を届けてくれて、そしてその音楽が素晴らしい、その事実がすべてだった。ビル・ベリーの脱退が彼らにとってどれほどの大きなことだったかを知り、それでも彼ら(当時の彼らは自らを「3本足の犬」と称していたっけ。なんて彼ららしい!)は活動を終えることを選ばなかった、それでも彼らは続けることを選んだ、それでも彼らはこれほどの素晴らしい音楽を届けてくれるんだ、それを知った時から、僕はきっと、彼らがいつか終わる、そのことを、想像の範疇から知らず知らずの内に追いやってしまっていたのだろう。

It's the end of the world as we know it, and I feel fine.

かつて「世界の終わり」と言う曲でデビューしたバンドは、確かにその活動の後期は、いつ終わっても不思議ではない、そんな気配を濃厚に漂わせていた。それでも続けて欲しいと願ってはいたけれど、どこかでその終わりを不可避なものとして受け止めざるを得ない気持ちになっていたのは、否定できない事実で。
かつて「本気出してないままで終了です」と歌う曲でシーンに登場したバンドは、その言葉とは裏腹に、誰がどう見ても本気で魂を削っているとしか形容できないような活動を続けた挙句に自家中毒に近い症状に陥り、そして最期に、もう1度だけの輝きだけを残して消えていった。悲しい終わりではあったけれど、あれ以外に道があったかと問われても、多分なかったんだろう。その活動の中期以降距離を置くようになっていた僕にも、それくらいは、何となくわかった。

初期の代表曲の一つに「It's the end of the world as we know it, and I feel fine」がある彼らは、今、どんな気持ちなんだろう。その終わりに、彼らは良い気分でいられたのだろうか。
僕は、終わりの気配を感じ取れなかった鈍感な僕は(だって今年の最新作「Collapse Into Now」は、まるで僕が初めて彼らに出会った「New Adventures〜」のように、行き場のない、やり場のない、あらゆる方向に拡散される気持ちにそっと寄り添ってくれるような、そんな素晴らしい作品なんだ!)、ただただ、悲しい。悲しいんだよ。悲しいんだよ!

バンドがひとつ終わる。その事実にこんなにも動揺し、こんなにもショックを受けるとは。
確かに近いところでは、一昨年にもそれはあった。ただあれは突き詰めて言えば、兄弟の仲違いだ。そして弟は、既に素晴らしい作品を作り上げた。兄も、間もなくだ。6年前に終わりを一方的に宣言した元メンバーが、今年になって突然リマスターを発表したってのもあったなあ。4人で作った素晴らしい作品を、1人でリマスターって。聴くもんかってんだ。
そういうケースとは根本的に違うんだと思うからこそ、こんなにも動揺し、こんなにもショックを受けているんだろう。

これから彼らがどういう活動をしていくのか、現時点では正式なアナウンスはない。それでも多分、何らかの形で音楽とかかわっていくんだろうなとは思う。そして彼らがこの先に音楽を発表していくのならば、僕はきっとそれを聴くんだろうとは思う。そう思うけど、今はただ悲しい。30歳を過ぎてもまだこんな気持ちになるんだなんて、思わなかった。知らなかった。知らないままなら、知らないままで良かったのに。

It's the end of the R.E.M. as we know it, and I feel sad.

でも、僕がこれまで生きてきた中で、彼らに教えてもらったもの、彼らから受け取ったもの、それらを思えば、悲しい気持ちだけを伝えて終わりにするのは違うよな。ヴァルネラブルであること、アンビヴァレントであること。彼らに出会わなければ、きっとその大切さには気づけていない。だから今も、ヴァルネラブルであろう。アンビヴァレントであろう。

It's The end of the R.E.M. as we know it, and I feel sad. and I wish you felt fine. ……but I feel sad, sad!

I'm not scared, I'm outta here.

僕があなたたちに初めて出会ったアルバムのラスト曲の最後の歌詞が、今は沁みます。さようなら。ありがとう。そして、これからも。


New Adventures in Hi Fi

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