あきらめる

読まずに小説書けますか 作家になるための必読ガイド (ダ・ヴィンチブックス)

読まずに小説書けますか 作家になるための必読ガイド (ダ・ヴィンチブックス)

こういうブックガイドの類が昔から好きでよく読む。作家になるためじゃなく、作家になれないことを確認するために読む。

福田和也松浦理英子のデビュー作「葬儀の日」を評して「本書を読んで何も感じない作家志望者は、その時点で作家をあきらめるべきだ」というようなことを書いていて、学生時代に(この言葉と、この作品の)二重の意味で衝撃を受けたのを、鮮明に憶えている。
島田紳助M-1グランプリを立ち上げたコンセプトのひとつに「10年やって芽が出なかった奴らに、この世界をあきらめさせるため」というようなことがあるのを知って、本当にその通りだと思ったし、そこだけは彼を尊敬している。

あきらめることは、あきらめないことと同じくらい大切なことだと思う。可能性を広げるために生きていくのも大切だけど、ある時点で可能性を狭め、そして選んだ道を見据えて生きていくのも、可能性を広げることと同じくらい大切なことだと思う。

夢を見る権利は誰にもあると思う。同じように、現実を見据える義務も誰にもあると思う。
そして、僕はもう現実を見据えるフェイズに突入している。

そして、現実を見据えながらその中で夢を見ていく、そんな生き方が、夢を見ていた時に思っていたよりずっと素晴らしいことを、僕は知っている。